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【書評】選ばれ続ける必然 誰でもできる「ブランディング」のはじめ方(著:佐藤圭一)

本書では、ブランディング・ディレクターやコンサルタントとして、ブランドを起点に企業経営とコミュニケーションの両サイドからコンサルティングサービスを提供し、コピーライターとしても、コーポレートスローガンやネーミング開発に携わる著者によるブランディング論が展開されています。

 

本の前半では「BRANDING」の「BRAND(会社や商品に意味を付け、形にする)」ことに言及。後半は「ING(形にしたものを伝える)」の方法論を様々な企業の例を引いて紹介しています。

 

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意外にも、著者が注力するのは「BRAND」のほうです。「何を伝えるべきか」がはっきりしないのに、「どう伝えるか」という手段ばかりにとらわれるのは、穴の空いたバケツで水をくんでいるようなものとし、「BRAND」を明確化するのに9割の力を注ぐべき、という意見。

 

ブランド化の利点として、まず「他のものとのちがいがわかるので選ばれやすくなる」こと。つまりたくさん売れるようになり、次に、「好きになってもらえれば選ばれ続けるようになる」。そうなれば継続的に売れ続け、結果的に「顧客がファンになってくれれば価格が高くても選んでくれる」という前提で、会社・商品のあるべき姿を規定して、形にする重要性が説かれています。

 

著者は、ブランド化が成功しない大きな要因として「ズレ」という言葉を挙げています。「会社とお客様とのズレ」、「会社の方針と社員のズレ」、「社員同士のズレ」です。それぞれの「ズレ」が生まれることが好ましくないのは、この「ズレ」が会社のウィークポイントになるからである、と強調します。つまり、「会社のあるべき姿」が、関係者全員にわかりやすい形で共有されていない状態です。

 

ブランディングには一貫性が必要で、これからの時代は、あるべき姿を形にできる会社だけが生き残れると主張する著者。なるほど確かに、企業だけではなく個人であっても、言行不一致や場当たり主義など一貫性のなさが多く見受けられる場合は理解されにくく、そのような人物は周囲及び社会から広く深く愛されることはまずないでしょう。

 

これから時代が変わっても長きにわたり会社を成長・発展させていくには、お客様や社会から「選ばれ続ける」必要があり、そのためには、「愛される会社」「信頼される会社」を目指すべき、と著者は述べます。名前やロゴ、商品やサービス、広告や店舗、そして接客態度…。確かにそれらは大事ではありますが、それらの外から見えやすい部分を支えるのは、会社の根となる「企業活動」とそれを行う「社員の行動」であり、さらに一番土台になるのは会社のマインド、つまり自分たちが大切にしている精神や哲学、こういう存在でありたいという気持ちである、という解説が続きます。あらゆるポイントで一貫した価値をお客様に提供し続けることが、お客様に支持される理由になる、という結論を導くのです。

 

「どんな人たちに愛されたいか(理想のお客様像)」「どんな価値を提供できるか(提供価値)」「どんな『らしさ/イメージ』を感じさせたいか」を定義することで、ブランドの「あるべき姿」が明確になっていきます。

 

まずはとにかく、徹底的に「理想のお客様像」を設定していきます。ここで注意するのが、「理想のお客様像」と「ターゲット」は違うということ。著者は、現在、日本のルイ・ヴィトンでブランド品を爆買いしているお客様の多くは中国人の富裕層であることを例に出します。ラグジュアリーブランドの「理想のお客様像」は、強い個性や主張を持った富裕層の個人であり、そういったお客様に向かって商品をデザインし、広告宣伝をしているけれども、実際に購入しているのは、そういったお客様像のライフスタイルや価値観に憧れを抱く人々であるという事実を踏まえ、時代ごとに一番買ってくれそうなお客様に向けたブランドを設定してしまうと、そのブランドのイメージがブレやすくなり、最終的にはブランド力の低下を招くと指摘。お客様のマーケット自体が縮小する可能性を指摘します。

 

理想のお客様像が見えてきたら、それに対して、自分たちの会社が提供できる価値を考えていき、受け手(お客様)が求める感覚・気分など心理的・感情的な部分に訴えかけていき、信頼感につなげていくのです。

 

会社の提供価値が明確になれば、会社に「人格」を与えられるようになり、例えば同じような業種の会社が、提供する価値が似たようなものであったものであったとしても、受け手の印象を変え、差別化することが可能になるというわけです。

 

◇おわりに

 

高度に発展した情報社会において、正しいブランディング(特に「何を伝えるべきか」)を考えるのは大変重要です。
「どんな人たちに愛されたいか」
「どんな価値を提供できるか」
「どんな『らしさ/イメージ』を感じさせたいか」
の三点を整理し、定義し、表現するというのは、そのまま個人にも応用可能です。人間であろうと、何かのチームや同好会、お店、そして地域や国に至るまで、人々が価値や意味を感じるすべてがブランドとなるべき対象になっている時代です。

 

本書のブランディングの方法を活用して、あらゆるところでブランディングを試みることは大きな意味があると感じ入る1冊です。

 

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